アルティウスリンクが積極推進するDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)では、障がいのある方が個性や特性を生かして活躍できる職場環境や制度を整備し、社員たちが育んだ文化・風土があります。全国のBPO・コンタクトセンター事業や、事務サポート、清掃、農産物栽培などの多岐にわたる業務で活躍するスタッフは500人以上!また、特例子会社の株式会社ビジネスプラスでは、約200人の障がいのあるスタッフが活躍しています。
今回のブログでは、ビジネスプラス創業当初、最初の業務として始まった喫茶業務の取り組みを、スタッフの活躍とともにご紹介します。
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■一日の始まりに癒しと活力を与えてくれる、喫茶業務のプロフェッショナルたち
アルティウスリンクの本社、小田急サザンタワーにあるセールスオフィスの一角には、ビジネスプラスが運営する喫茶コーナーがあります。整理整頓され清潔感あるキッチンでは、緑の制服を着たスタッフの皆さんが7時30分から開店の準備を行っています。コーヒーの香りが漂う空間のなか、オープンとともにたくさんの社員がコーヒーやドリンクを求めて喫茶コーナーを訪れるたびに、「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」といった心地のよい挨拶が聞こえてきます。
喫茶コーナーは打合せスペースにもなっているため、会話を邪魔しない挨拶の声のトーンやボリューム、常に来客を意識した接客姿勢からは接客のプロとしての意識の高さが伺えました。
また、来客時の打合せにも喫茶コーナーのドリンクがふるまわれ、お客様への”おもてなし”として喜ばれているほか、 朝と午後、2フロア合わせて3回、オフィスの一角で出張喫茶も行っており、販売が始まると、回数券を手にした社員が日常的にドリンクを購入する姿が見られるなどこちらも大盛況!
「朝から美味しいコーヒーを飲めるのがうれしい」「仕事で疲れているときに、『お疲れ様です』と声をかけてもらって、心まで元気になった」など、お客様や社員に癒しと仕事への活力を与えてくれています。
<「いらっしゃいませ」心地のよい挨拶と美味しいコーヒーで始まる一日は仕事がはかどるという声も多数!>
喫茶業務の始まりは、ビジネスプラス設立の3年後となる2005年にさかのぼります。まだ知的障害のある方の働く場が少なかったころ、創業者が障がいの程度や分類に関わらず「誰もが社会に出る楽しさ、喜びを感じられる社会を」と、創業とともにまず取り組んだのが喫茶業務でした。それから18年が経った現在、障がい者スタッフ9名と援助者と呼ばれるサポートスタッフの3名体制で喫茶業務にあたっており、障がい者スタッフの約7~8割が10年以上働くベテランのスタッフです。
障がいの有無によって分け隔てられることなく、互いに尊重しながら共生する社会「ノーマライゼーション」を体現し、接客のプロとしてスタッフが活躍する喫茶業務の取り組みについて、統括されている梅本さんにお話しを伺いました。
■ “できない”から始まる、喫茶業務運営の工夫とは
ドリンクの製造販売や接客を行う喫茶業務において、美味しい商品を提供するための品質管理やお客様とのコミュニケーションはとても重要なこと。製造や出張喫茶の現場では、ラベルによる製造時間の管理やシールで分かりやすく補充のタイミングを把握できる仕組みなど、さまざまな工夫がなされています。
<ドリンクの回数券を持っている社員が多数!たくさんの人に利用されている出張喫茶では会話もはずみます>
――(新宿南事業所 統括 梅本 隆也さん)「障がいのあるスタッフ3人に1人が援助者としてサポートをしていますが、一人ひとり障がいの特性は違いますし、マニュアル通りに業務を教えてもミスは誰にでも起こり得ます。
重要なのはミスが起きた時に一人ひとりの障がいの特性を踏まえながら原因を分析し、どうすればできるようになるのかを考えることです。また、手順が多いと当然ミスも増えるため、なるべく手順を少なくすることを念頭において運営の工夫をこらしています。
例えば、当初ドリンクはコーヒーのみでしたが、社員から「コーヒー以外のドリンクも飲みたい」というリクエストを受けて、種類を増やしました。ドリンクの種類によって価格が変わることは、会計の煩雑化につながり、対応が困難なケースも出てきました。そこで、価格を一律100円にし、回数券も発行することで、お釣りや売り上げの集計をシンプル化し、ミス軽減につなげることができました。
こうすることで、販売だけにとらわれ過ぎることなく、コーヒーの品質管理や資材の補充、売り上げ管理などより多くのことをこなしていけるようになってきています。作業手順を減らし、ミスを軽減する仕組みに変えたことで、より一層コミュニケーションを図ることに注力するスタッフもいます。
ドリンクを買いに来る社員の名前を覚えて、『●●さん、お仕事お疲れ様です』とお声がけをしながらコミュニケーションを図るスタッフもいて、そのスタッフがいるときは必ず買いに来てくれるファンのような社員もいるくらいです。」
<お話を伺った新宿南事業所 統括 梅本 隆也さん>
■援助者と二人三脚、一歩ずつ“できること”を増やしていく
こうしてミスを減らす運営の工夫により業務効率があがり、接遇にも好影響が出ている喫茶業務での取り組み。その工夫の裏側には、援助者とスタッフが二人三脚となり、じっくりと向き合いながら一歩ずつ『できること』を増やしていく積み重ねがあるといいます。
――(梅本)「仕事は楽しくないと続けられません。でも楽しいだけではなく、仕事には必ずゴールはあるので、そのゴールにたどり着いてもらうことが仕事の喜びにつながると思っています。人によってゴールへの工程は異なりますし、失敗するのは当たり前。本人たちのやりたいという気持ちを一番に考えながら『今日明日できないことも、一年たったらできるように』という心持ちで援助者はスタッフとじっくり家族のように寄り添っています。
定期面談など改まった場を設けなくとも、何かあった場合は直ぐに援助者に相談があります。スタッフの相談の内容に応じて、就労支援センターとも連携しながら対応を行っています。
また、スタッフの年間の個人目標は援助者がスタッフに合ったものを本人に提案し、1年後にどれだけ達成できているか確認しあいます。目標を共有することで、なぜ注意されたのかわからない、ではなく、あの目標に対して今の対応はこうだった、と明確に振り返ることができるため、本人も納得感をもって受け止めることが可能です。」
<業務の間も援助者が近くにスタンバイ スタッフ一人ひとりの経験や得意不得意を把握し、作業工程における業務分担の調整をはかってそれぞれの“できること”が増やせるようにサポートしています>
――(梅本)「援助者は、スタッフ一人ひとりの可能性を信じています。ですが、経験を重ねるごとにどうしてもこの作業は難しいかもと先入観を持つこともあります。
先ほど、社員の名前を覚えているスタッフがいるとお伝えしましたが、社員証の名前や業務で読めなかった漢字がある時に、スタッフが自ら辞典を買って調べたり、援助者に聞いたりして率先して学んでいます。
また、別業務でも社内便の発送作業を行った際には、番号と部署名の紐づけを覚えるために、全員で漢字の練習を自ら進んで行っていました。自分の苦手なことに向き合い、自己認識することで奮起し、新たな可能性がひらけることもあるということを、スタッフから教えてもらっています。
当社の援助者には未経験者の方も多く入社しています。未経験だからこそ先入観無くスタッフに接することができるということもあり、まずはやってみるという大事なことができていると感じます。これからも本人のやる気を大事に、援助者のメンバーはスタッフの“できない”を一歩ずつ“できること”に変えていくことのできる伴走者として共に成長していきたいと思います。
知的障害のある方が就労できる職場や安心して働くことのできる環境はまだ少ないのが現状ですが、経営統合を機にアルティウスリンクとしてさらなる事業の拡がりをみせている今、当社の喫茶業務から始まった“できること”を増やす取り組みを、これからもっと社会に広げていけたらいいなと思っています。」