アルティウスリンクでは、現在600名以上の障がいのある方が、コンタクトセンターをはじめとした全国各拠点で活躍しています。その所属する部署は、コンタクトセンターなどの基幹ビジネスの部署が8割、障がい者雇用専門部署が2割(さらに特例子会社・株式会社ビジネスプラスも別に運営)と、コミュニケーションが得意でない方や多くの人のなかでの就業が難しい方など、基幹ビジネス部署での就業が難しい方でも活躍できるよう、専門部署を設けて環境を整えてまいりました。
東京(新宿)を拠点とする「事務サポートユニット」は、社内の事務・庶務業務の代行や印刷、社内便の業務を行っています。2016年のユニットの立ち上げから現在に至るまでさまざまな取り組みを行っているほか、障がい者雇用に取り組む企業に対し見学会も開催しています。この度、取り組みを紹介する2つのイベントにオファーをいただき、ユニットを代表して村上ユニット長が登壇した模様を鳥取の前後編と東京編の3回にわたってご紹介!
今回は鳥取後編として「活躍につなげる3つの柱」をお届けいたします。
<左:とっとり就労支援フォーラム(鳥取)/右:キャリア自律イベント(東京)>
■「やっと自分らしく働ける職場に出会えた」と思ってもらうのは企業の役割
後半パートでは、「活躍につなげる3つの柱」と題し、従業員に対するサポートをどのように進めているかを紹介しました。
3つの柱には、「①職場定着のサポート」「②育成のサポート」の両軸で就業への安心感を醸成し、それを支えるための「③管理者のスキルアップ」を挙げました。
- 職場定着のサポート
職場定着のポイントを「知ること、理解すること」と「仲間になること」の2つを挙げました。
知ること、理解すること | 不安は知らないから。職場や仲間を知り自分も知ってもらえば安心 |
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仲間になること | ユニットの一員と感じることで、職場や仲間に愛着を持てる! |
「知ること、理解すること」では、不安になるのは知らないからであり、共に働く仲間や職場を知り、自分自身のことも知ってもらうことで安心できる環境づくりができると伝えました(心理的安全性の確保)。そのための活動として、入社時のガイダンスに多くの時間を割き、職場への理解促進につなげていると説明。そのほか、「わたしのトリセツ」という自身の得意・不得意、助けが必要な場面を言語化した自己紹介シートを従業員全員が作成し、共有。また、「ファミリー見学会」では、従業員の家族を職場へ招待し、家族の理解も深める取り組みを行っていることなどを紹介しました。
また、「仲間になること」では、従業員自身がユニットの一員と感じることで、職場や仲間に愛着を持てるようになることが定着につながると伝えました(帰属意識/一体感の醸成)。主な活動には、毎月仲間の良かったこと・助けてくれたことなどをカードに記し一覧掲載する「GOODコメントカードの掲示」や当社の社会的存在意義と大切にしたい共通の価値観である「パーパス&バリューズ」の浸透活動としてグループディスカッションや発表の場を設けるなどの実施例を挙げました。
- 育成のサポート
育成のポイントでは「経験者に頼らない」と「挑戦できる環境」の2つを挙げました。
経験者に頼らない | 育てればいい! 就業意欲があれば誰にでもチャンスはある! |
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挑戦できる環境を | 目標とスキルアップが見える。新しい業務/役割に挑戦したくなる |
「経験者に頼らない」では、就業意欲があれば誰でもチャンスはあり、育てていくことが大切だとし、例えば、就業経験がなく、パソコンスキルやビジネスマナーが身についていないとしても、一から教え、業務遂行と社会人としての基礎力を支援していることを伝えました(ダイバーシティの実現)。
また、「挑戦できる環境」では、目標とスキルアップが見え、新しい業務/役割に挑戦したくなる環境整備が重要だと伝えました(成長の実感)。環境整備の一つとしてスキル要件を設定し、習得状況の可視化と業務難易度に応じた役割が設定されていることを紹介。役割には「プレイヤー」「シニア」「サポーター」などのほか、新人育成を担う「チューター」や特定の業務を指導する「ジョブチューター」も制度として導入していると説明しました。また、業務に対する精度にこだわりを持たせることで、会社の戦力であるというマインド醸成も行っていると伝えました。
- 管理者のスキルアップ
ポイントに「自分たちでスキルアップ」「日々の配慮は裏切らない」などの5点を掲げました。
自分たちでスキルアップ | 障がい者の管理経験がないことを言い訳にしない! |
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日々の配慮は裏切らない | この職場で働き続けたいと思えるかは安心感の積み重ね! |
面談は質とタイミング | 適切なタイミングで質の良い面談ができるかは雇用継続の鍵! |
自分たちで場数を作る | トラブルやメンタル不調の面談は待ってくれない! |
知識は必要 | 気持ちだけでサポートできるほど障がい者雇用は甘くない! |
例として、「自分たちでスキルアップ」では、管理者は社内異動によって集っているため、障がい者のサポートや管理経験がない者ばかりだが、知識がないことを理由に不用意な発言や配慮不足はあってはならないとし、理解を深めるためのスキル向上が大切だとしました。障がい特性を理解し、面談や応対のスキルを身につけ、ミスジャッジをしないように事実をしっかり受け止めて平等な対応を心がけることが安定したサポート体制の構築には必要不可欠と説明しました。そのほか、「面談の質とタイミング」では、面談の質は日頃の関係性の構築が鍵であるとし、カウンセリングの基本的な手法を学び、リアルにこだわったロープレを2017年より毎月実施して「面談力」を向上。従業員から話しかけられた際に片手間で話を聞いてしまうと、相手が不調だった時にダメージを強く与えてしまう。些細なことではあるが、手を止め、身体ごと相手に向け、相手の顔をしっかり見て向き合う姿勢を作ることが質を高めることにつながると伝えました。また、管理者がすぐに対応できない場合にも自分の状況をしっかり伝えるなどの工夫が必要なことも紹介しました。
■明日も来たいと思える職場を作りたい!
最後に、事務サポートユニットが目指す職場として「明日も来たいと思える職場」について想いを伝えました。
「同じ職場の仲間として、社会人として許し合う。認め合う。相談し合う。そして、称賛と感謝が行き交う職場にしたいです。メンバーのなかには、当社で勤務いただく前につらい経験をしてきた方もいます。だからこそ、良いことは黙っていないですべて口に出してほしい。例えば、作業に時間を要したことに反省しているときには『丁寧にやってくれた』とポジティブな言葉に変換して伝え、手伝ってくれたことに『ありがとう』の言葉をすぐに伝える。それが同じ職場で働く全員が仲間として当たり前に行われる職場でありたいです。加えて、成長を感じられる場所として、仕事ができるようになって楽しいとか認められていることで役にたっているという予感や希望を持ち続けられる職場にしたいと思っています。」とまとめました。
このようにして、約2時間の講演が終了しました。
<講演終了後は参加者の方が列になって名刺交換やご挨拶に来てくださいました>
障害者就業・生活支援センター くらよし 森様からいただいたコメント
職員のみならず多くの参加者が、障害がある人との関わりや支援は、「こんなにやりがいがあって、すばらしいことなのだ」と感じることができたと思います。これから、それぞれがそれぞれの職場で仕事の励みとして心に残る有意義な時間になりました。
参加者からのいただいたアンケート
講演終了後にお答えいただいた「参加者アンケート」では、回答いただいた方28名すべてが「参考になった」という嬉しい結果でした。いただいたコメントも一部紹介いたします。
<参加者からいただいたアンケート(提供:障害者就業・生活支援センター くらよし)>
- 就職がゴールではなく、それからが勝負。活躍できる機会をどう創り出していくかに正面から取り組んでおられることがよく分かりました。支援者に情熱があること、雇用の採用基準が働く意思と自己理解があるという点とその理由にも実践を踏まえておられ、説得力がありました。
- 採用時に「就業意欲」と「自己理解」の2点を大切にしている話は多くの方に知ってほしいと思った
- 障がい者雇用を組織で行っている会社のなかで業務分担や効率化を担っておられ、面談の頻度や職員の気持ちに寄り添った行動含め、感銘を受けました。自法人ではとてもできないと思ったりしています。ただ、できないをできるに変えるためにも今回の講演はとても参考になり、効率化できる仕事を集約するという発想にできるものは何なのかという視点を持つことができました。人材不足で効率化をしていく中で支え合うことができるように検討していきたいと思います。
障害者就業・生活支援センター くらよしの公式サイトでもイベントの様子をご覧いただけます。
次回は東京都内で開催されたリクルート主催の自律支援イベントをご紹介します!
アルティウスリンクは、今後もDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進するとともに、従業員の活躍や職場の取り組みを発信してまいります。